2026年9月4日に国連総会が世界地図で国や大陸の面積をより正確に表すため、「メルカトル図法ではなく、イコールアース図法」の利用を促す決議を採択しました。この採択には日本を含む164カ国が賛成しています。
このニュースを見て、「メルカトル図法の何が問題なの?」「イコールアース図法とは?」「実際の生活に何か影響はある?」と疑問に思った方もいるのではないでしょうか。
この記事では、メルカトル図法の問題点、イコールアース図法との違い、国連による推奨で今後どのような影響が考えられるのかを整理していきます。
メルカトル図法の問題点
メルカトル図法の主な問題点は、赤道から離れた高緯度の地域ほど、実際より面積が大きく見えることです。
球体に近い地球を平面の地図にすると、面積、距離、方位、形のすべてを同時に正しく表すことはできません。
メルカトル図法は角度や局所的な形を優先しているため、その代わりに面積のゆがみが生じます。
つまり、メルカトル図法そのものが間違っているのではなく目的に合わない世界地図で国や大陸の大きさを比べると、誤解につながりやすいことが問題です。
問題点:高緯度の国ほど実際より大きく見える
メルカトル図法では、赤道付近から南北へ離れるほど縮尺が大きくなります。そのため、グリーンランド、ロシア北部、欧州、北米などが実際の面積比より大きく見えます。
分かりやすい例がアフリカ大陸とグリーンランド。メルカトル図法の世界地図では、両大陸が近い大きさに見えます。しかし実際には、アフリカ大陸が約14倍の面積あります。
(アフリカ大陸の面積は約3,037万平方キロメートル、グリーンランドは約216万平方キロメートル)
この見え方が、「アフリカ大陸の規模を実際より小さく認識させてきた」という問題意識から、アフリカ諸国が地図表現の見直しを求めていました。
メルカトル図法とイコールアース図法との比較
メルカトル図法とイコールアース図法では、地図上で何を正しく表すことを優先するかが異なります。
用途、長所、短所を比較すると次のようになります。
| 比較項目 | メルカトル図法 | イコールアース図法 |
|---|---|---|
| 重視する正確さ | 角度と局所的な形 | 国や大陸の面積比 |
| よく使われる用途 | 航海、経路案内、拡大・縮小できるウェブ地図 | 世界全体の主題図、教材、統計や面積の比較 |
| 代表的なサービス・採用例 | Google Maps JavaScript APIなど | アフリカ連合、NASA GISSでの採用例。ArcGIS Proなどでも利用可能 |
| 良いところ | 一定の方角で進む航路が直線になり、方角を確認しやすい | 国や大陸を実際の面積比で比較できる |
| よくないところ | 高緯度ほど面積が大きく見え、極を表示できない | 面積以外の形、角度、距離、方角にはゆがみがある |
| 適する場面 | 移動経路や方角を確認したい場合 | 世界の国・大陸の大きさを比較したい場合 |
メルカトル図法では、一定の方角で進む「等角航路」が地図上で直線になります。そのため、航海や方角の確認には実用的な図法です。正方形のタイルで地図を表示しやすく、Google Maps JavaScript APIをはじめとするウェブ地図でも使われています。
一方、2018年に発表されたイコールアース図法は、地球上で同じ面積の地域を地図上でも同じ面積比で表す「正積図法」です。国や大陸の広さを比べる教材や、世界規模の統計を示す主題図に向いています。
ただし、イコールアース図法も万能ではありません。面積比を保つ代わりに、地域の形、角度、距離、方角にはゆがみが生じます。
経路案内も面積比較も一つの図法で済ませるのではなく、地図の目的に合わせて使い分けることが重要です。
イコールアース図法推奨の影響
今回の国連決議は、教育、制度、メディアなど、国や大陸の面積を正しく比較する必要がある場面で、イコールアース図法を含む正積図法の利用を促すものです。
決議には法的拘束力がないため、世界中の地図が直ちに一斉変更されるわけではありません。影響は、各国政府、教育機関、報道機関、出版社、デジタルサービスなどが今後どのように対応するかで変わります。
メルカトル図法が使用禁止になるわけではない
国連決議が採択されても、メルカトル図法が使用禁止になるわけではありません。
見直しが求められているのは、主に国や大陸の面積比較を目的とする世界地図です。航海や経路案内のように、メルカトル図法の特徴が役立つ用途まで置き換えるよう求めた決議ではありません。
ニュースの「メルカトル図法をやめる」という表現だけを見ると全面廃止のように感じられますが、実際には目的に適した図法を選ぼうという提案に近い内容です。
学校や教材はすぐに変わる?
学校の世界地図や教科書が、決議だけで直ちに変更されることはないと考えられます。
アフリカ連合は加盟国に教育課程の見直しを促し、教育、デジタルプラットフォーム、メディア、出版へのイコールアース図法の導入を進めています。ただし、2026年9月5日時点では、日本政府や文部科学省から具体的な教材変更の方針は確認できません。
今後、日本の教科書や学校用地図に影響するかどうかは、文部科学省や教科書会社などの発表を確認する必要があります。
Googleマップなどのサービスは変わる?
2026年9月5日時点では、今回の国連決議を受けてGoogleマップがイコールアース図法へ変更されるという発表は確認できません。
Googleの公式資料によると、Google Maps JavaScript APIではメルカトル図法が使われています。拡大・縮小や経路確認を行うウェブ地図は、世界全体の面積を比較する教材とは目的が異なります。
そのため、すべての画面をイコールアース図法へ置き換えるとは限りません。一方で、世界全体を表示する画面や面積比較が重要なコンテンツでは、今後、正積図法を選ぶ動きが広がる可能性があります。
日本もメルカトル図法では高緯度側ほど拡大されますが、グリーンランドなどの極域ほど差は極端ではありません。イコールアース図法では各国との面積比が実際に近づく一方、形や角度の見え方は変わります。
まとめ
メルカトル図法の問題点と、国連が推奨したイコールアース図法との違いを整理しました。
- メルカトル図法は、高緯度の地域ほど面積が大きく見える
- アフリカはグリーンランドの約14倍だが、メルカトル図法では近い大きさに見えてしまう
- メルカトル図法は航海やウェブ地図、イコールアース図法は面積比較に適している
- 国連決議はメルカトル図法の使用禁止ではなく、正積図法の利用を促すもの
- 日本の教材やGoogleマップの具体的な変更は、2026年9月5日時点で確認されていない
地図は一種類ですべてを正しく表せるものではありません。
今後は「どの地図が正しいか」だけでなく、「何を見るための地図なのか」を頭の片隅に置いておくことが大切になりそうですね。


コメント