2026年10月7日、東京理科大学名誉教授の硤合憲三氏ら2人が、ノーベル化学賞を受賞すると発表されました。
ニュースを見て、
「硤合憲三の名前は何と読むの?」
「Soai反応は本人の名前と関係がある?」
「どのような研究が評価されたの?」
と気になった人もいるのではないでしょうか。
この記事では、硤合憲三氏の名前の読み方と経歴、Soai反応の仕組み、ノーベル化学賞につながった理由を、ノーベル賞公式サイトなどの情報に基づいて分かりやすく整理します。
硤合憲三氏の「硤合」は何と読む?どうやって変換する?

「硤合憲三」は、そあい・けんそうと読みます。英語では「Kenso Soai」と表記されます。
「Soai反応」は、硤合氏が発見した不斉自己触媒反応につけられた呼び名です。
つまり「Soai」は、発見者である硤合氏の名字に由来します。
「硤」は常用漢字ではないため、入力や変換が少し大変です。「こう」または「きょう」と入力して変換すると、単漢字として表示されます。
硤合憲三氏は何者?経歴と研究分野

硤合憲三氏は、東京理科大学で名誉教授を務める有機合成化学を専門とする化学者です。
主な経歴を整理すると、次のようになります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 生年・出身地 | 1950年、広島県生まれ |
| 学歴 | 1974年に東京大学理学部化学科を卒業 |
| 学位 | 1979年に東京大学大学院で理学博士を取得 |
| 所属 | 東京理科大学名誉教授 |
| 主な受賞 | 2012年に紫綬褒章 2025年に日本学士院賞 |
2025年の日本学士院賞では、「不斉自己触媒反応の発見とホモキラリティーの成立起源に関する研究」が評価されました。その翌年、研究はノーベル化学賞へつながったことになります。
ノーベル賞公式インタビューでは、研究グループの成果が認められたことへの喜びを語っています。
また、同じ分野の世界の研究者を競争相手というより「科学の友人」と捉えている趣旨の発言もあり、長年にわたって国際的な研究交流を続けてきた様子がうかがえます。
Soai反応とは?何がすごいのかをわかりやすく解説

Soai反応の大きな特徴は、できた分子が、同じ種類の分子を作るお手伝いをすることです。まずは、白い材料と赤・青の粒にたとえて考えてみましょう。

白い材料からは、赤い粒と青い粒ができます。できた赤い粒には、残っている材料から、次の赤い粒を作るお手伝いをする力があります。青い粒も同じです。
もし最初に赤がほんの少し多くできると、赤を作るお手伝い役も多くなります。赤が増えると、お手伝い役がさらに増え、最後には赤い粒がほとんどになることがあります。別の回では、青が多くなることもあります。
このとき、白い材料は新しい粒を作るために使われて減ります。青が赤に変わるわけではありません。
硤合氏の発見がすごいのは、この「できたものが、同じものを増やす手伝いをする仕組み」を、実際の分子の実験で示したことです。 さらに、人が最初の差をつけなくても、偶然生じた小さな差が広がる反応も示しました。
私たちの体にも、二つの形のうち主に片方だけを使う材料があります。この反応は「なぜ片方だけになったのだろう?」という、生命の始まりに関わる謎を考えるヒントになりました。
※赤・青・白は説明のための色です。実際に色が変わるという意味ではなく、図の粒の数も説明用です。
分子にも右手と左手のような違いがある
右手と左手は鏡に映したような形をしていますが、向きを変えても完全には重なりません。
分子にも同じような関係を持つ二つの形があり、この性質を「キラル」、二つの分子を「鏡像異性体」または「エナンチオマー」と呼びます。
見た目はよく似ていても、生体内などでは左右の違いが重要になることがあります。
そのため、片方の分子を選んで作る不斉合成は、化学の重要な研究分野です。
ただし、不斉合成の知識が医薬品などの反応設計に重要であることと、Soai反応そのものが医薬品製造へ直接使われていることは別です。
わずかな左右差が自分で大きくなる
図の「お手伝い役」を化学の言葉で「触媒」と呼びます。できた分子自身が触媒となり、同じ形の分子をさらに作るのが「不斉自己触媒反応」です。
小さな左右差が次の反応を通して大きくなることを「不斉増幅」といいます。
分子が自分の体を割って増えるのではなく、新しい分子を作る材料が必要です。反応が最後まで進まなければ、材料が残ることもあります。
1995年と2003年の成果は何が違う?
硤合氏の研究では、1995年と2003年に重要な成果が報告されています。二つは同じ内容ではありません。
| 年 | 確認された結果 | 研究上の意味 |
|---|---|---|
| 1995年 | 一方の鏡像体が2%多い状態から、偏りを87%まで増幅 | 小さな左右差を自己触媒反応で大きくできることを示した |
| 2003年 | 非キラルな分子から生じたごく小さな偏りが増幅し、一方が99.99%を占め得ることを示した | 最初のわずかな偶然から、一方の型が圧倒的に多くなる可能性を示した |
2003年の反応は、最初から右型または左型を意図的に多くしたものではありません。
反応を繰り返すと反対側が優勢になる場合もあり、最初に生じた偶然の偏りが結果を左右することも示されました。
Soai反応がノーベル化学賞につながった理由

2026年ノーベル化学賞の公式な授賞理由は、不斉有機合成における「非線形効果」と「自己触媒作用」の発見です。
硤合氏の研究が評価されたのは、理論として考えられていた自己増幅の仕組みを、実際の化学反応として成立させたためです。
さらに、生命がなぜ片方の鏡像体を主に使うようになったのかを考えるうえでも、重要な手掛かりを示しました。
生命が片方の分子を使う謎に近づいた
生命を構成する分子にも左右があります。生体のタンパク質を作るアミノ酸や、DNAに含まれる糖は、可能な二つの鏡像体のうち主に片方だけが使われています。
この状態は「ホモキラリティー」と呼ばれます。
生命が生まれた初期に、なぜ片方だけが選ばれたのかは大きな謎です。
Soai反応は、ごく小さな偶然の偏りが化学反応によって増幅され、一方の型が大多数になる仕組みを実験で示しました。
一方で、ノーベル賞の一般向け解説は、Soai反応が人工的な反応で、生命の化学とは異なることも説明しています。
「生命の起源をそのまま再現した」のではなく、ホモキラリティーが成立し得る分子レベルの仕組みを示したと捉えるのが適切です。
共同受賞したアンリ・B・カガン氏とは誰?
アンリ・B・カガン氏は、フランスの化学者です。1986年に、不斉反応における「非線形効果」を報告しました。
非線形効果とは、触媒の左右差と、反応でできる生成物の左右差が単純な比例関係にならず、小さな差が予想以上に大きく現れる現象です。
カガン氏の発見は、わずかな偏りが大きな結果につながる可能性を示しました。
二人の功績を整理すると、次のようになります。
| 受賞者 | 主な功績 |
|---|---|
| アンリ・B・カガン氏 | 不斉反応における非線形効果を報告 |
| 硤合憲三氏 | 不斉自己触媒反応を発見し、小さな偏りの自己増幅を実証 |
カガン氏が小さな左右差が非線形に現れる現象を示し、硤合氏が生成物自身を触媒にして差を増幅する反応を実現しました。
この二つの研究が、不斉有機合成における左右差の理解を大きく進めたとして、2026年の共同受賞につながりました。
まとめ
硤合憲三氏の名前の読み方と、Soai反応がノーベル化学賞につながった理由を紹介しました。
- 「硤合憲三」は「そあい・けんそう」と読む
- Soai反応は、硤合氏が発見した不斉自己触媒反応に由来する名称
- 1995年には2%の偏りを87%まで増幅した
- 2003年には偶然生じたわずかな偏りが、一方の99.99%まで増幅し得ることを示した
- 2026年ノーベル化学賞は、アンリ・B・カガン氏との共同受賞
Soai反応は、生命がなぜ片方の鏡像体を主に使うのかという謎を考えるための、重要な実験的手掛かりになりました。
ノーベル賞授賞式は、12月10日にストックホルムで行われる予定です。今回のニュースをきっかけに、身近なものを形づくる分子の不思議にも、少し目を向けてみたくなりますね。


コメント